スキンケア豆知識

乾燥や炎症をともなう皮膚疾患や、その他疾患の副作用による皮膚症状で病院にかかると必ずといっていいほど処方されるヒルロイド(ヘパリン類似物質)ですが、近年(2018年現在)、美容目的での利用が問題になっています。その潤いが女性誌や美容ブロガーの方々の間で話題になり、酷い時期にはインターネットオークションで競売されていたこともあります。

これに対し、処方箋によるヒルロイド(ヘパリン類似物質)の目的外利用(特に美容)は不適切である旨、厚生労働省や健康保険組合から見解が出されています。これは当然のことだと思います。処方箋にかかる費用の一部は、税金や健康保険組合が負担しており、ただでさえ存続が危ぶまれている保険制度の崩壊に対しその加速度が増してしまうからです。

このような状況が問題視され、一時期、厚生労働省では、ヒルロイド(ヘパリン類似物質)を保険適用から外したり、処方量に制限を設けるなどの案が出されました。結局この案は、患者の方々や関連学会の反対に配慮して取り下げられましたが、一部のモラルに欠けた行動によって、いつまたこのような話題が持ち上がるとも限りません。そうなると本当に必要な方々が迷惑しますので、処方箋によるヒルロイド(ヘパリン類似物質)の目的外利用は絶対にやめるべきです。

ところで、こうまでして求められるヒルロイド(ヘパリン類似物質)とはどのような化学物質なのでしょうか?もともとは肝細胞から発見されたためheparin(「hepato-」肝細胞の)に由来)と命名されましたが、実際には小腸、筋肉、肺、脾や肥満細胞など体内のいたるところに存在する物質で、豚の腸粘膜から採取されるのが一般的です。ヘパリンそのものは血栓塞栓症などに対する抗凝固薬として用いられています。

ヘパリンの化学物質名称は「ヘパリン」、ヘパリン類似物質の化学物質名称は「ヘパラン硫酸」で、ともにグリカン類(多糖類)の一種です。ちなみに、保湿成分として有名なヒアルロン酸もグリカン類の仲間です。なるほど、ヒアルロン酸の仲間なら保湿に効き目がありそうですね。しかし一方で、処方箋に0.3%しか含有されないヘパラン硫酸が、そこまで保湿に対して効果があるのでしょうか?ヒアルロン酸の仲間なら、ヒアルロン酸で代替すれば済む話です。

実際に複数名のお医者様と会話をすると「猫も杓子もヒルロイド(ヘパリン類似物質)」とおっしゃる方が結構いらっしゃいます。要するに「処方可能な外用保湿剤がヒルロイド(ヘパリン類似物質)しかないからこれを使っているだけで、他に良いものがあるならそれを使用したい」ということで、ヘパラン硫酸そのものに驚くような保湿作用は期待していないということです。

処方箋によるヒルロイド(ヘパリン類似物質)の処方設計をみてみると、大半の成分が化粧品でも使われているグリセリンやスクワランで、これらによって保湿力の不足分を補っているのだと推察されます。また、保湿以外のヘパラン硫酸の作用として、抗炎症作用や血行促進作用が挙げられますが、これらも化粧品成分の中には補えるものがたくさんあります(どこの企業様が開発した何という化粧品成分であるかを記載することは薬機法上不適切と考えられるため、残念ですが不記載とさせていただきます)。

ここで述べたいことは、患者さんをはじめ、国の財政や健康保険組合に迷惑をかけてまで、ヒルロイド(ヘパリン類似物質)を取り合いする必要はないということです。そしてそのような非モラル的な行為は厳に慎むべきだということです。以前と違い、力のある化粧品成分が次々と開発されていますし、それらについて勉強できる講座や書籍がたくさんあります。知識を養い、全成分表示を読み解く力を身に付けることによって、処方箋を不適切に利用しなくても、ご自身に合った基礎化粧品を使用し、断然に肌にうるおいを与え、肌を健やかな状態に保つことは十分にできるのです。